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子どもの就学・進学にあわせたお金の貯めどきと使いどき

子どもにかかる教育費の額は、幼稚園(保育園)入園から小学校、中学校、高校、大学卒業まで、毎年異なります。ここでは、子どもにかかる教育費の平均値や給与所得の平均値から、収入と支出のバランスがどのようになるのかを予想していきます。そして、子どもの進学に合わせた、お金の貯めどきと使いどきを考えてみましょう。

子どもの教育費には波がある!

いずれ子どもが大きくなり大学への進学を望んだとき、毎年の教育費にいくら必要なのかが気になります。では、幼稚園から高校まで公立に通い、私立大学に進学させると仮定したときの、平均的な毎年の教育費を知っておきましょう。

平成28年の「子供の学習費調査」※1の学校別の学習費総額をみると、公立幼稚園では年に約23万3,947円、公立小学校では年に約32万2,310円、公立中学校では年に約47万8,554円、公立高校では年に約45万862円の教育費がかかっていることが分かります。

幼稚園から高校まで公立だと幼稚園が最も学習費総額が少なく、次に小学校、高校と続き中学校が最も学習費総額が高くなっています。

次に大学の教育費です。高校卒業後に、私立大学に入学する場合の初年度の学生納付金の平均的な額は「私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」※2より分かります。調査結果によると、入学料が25万2,030円、授業料は90万93円、施設維持費18万1,924円の合計133万3,418円が必要になります。

つまり、子どもが私立大学に進学したときの初年度の教育費は、公立高校に在学中の教育費の倍以上かかります。

このように子どもの教育費は、子どもが通う学校(小学校・中学校・高校・大学など)によって支出額が変動します。さらに、子どもの習い事を増やしたり減らしたり、中学校から私立にするか、大学は国公立に絞るかなど、家庭毎の教育プランによっても変わるように、教育費は子どもの就学・進学などに伴う“波”があるのです。

保護者の収入の波は?

xiangtao / PIXTA

では、保護者の収入面には波があるのかを確認していきましょう。「民間給与実態統計調査」※3によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は平成27年が420万円、平成28年が422万円、平成29年432万円となっています。

このことから、子どもを育てる保護者が正社員などの給与所得者である場合、毎年の収入は比較的安定していて大きな波はないと言えます。

同じ企業に継続して正社員として勤めている方は給与の変動は少なく、収入を増やすには昇格や昇進などが伴うことになるでしょう。パートや契約社員など時給制の場合は勤務時間を増やせば収入が増加します。また、出産や育児で休職や退職をする場合には、一時的に収入が減ることになりますが、子どもが小学校に上がるころから再び働くことで、収入は比較的安定させることができます。

毎年の収支はアンバランス

子どもの進学に伴って収入が増えていくと収支バランスは理想の形となるのですが、給与の変動が少ない給与所得者の場合は、子どもの教育費の波にあわせて収入を増減させることは難しいです。そのため、公立の小学校に通っている時期など子どもの教育費が少ないうちは毎年の収支が黒字でも、子どもが大学に行くときには教育費が増え、家計が赤字となることもあります。
つまり、進学による教育費の増減によって、毎年の収支がアンバランスになるのです。

さらに、教育費は子どもの人数分かかります。子どもが2人なら2倍、3人なら3倍の支出となります。
2歳差の子どもが3人いる場合、子どもが小学生のとき(2年生・4年生・6年生)は、教育費は3人の合計で約96万(月額約8万円)であり、家計の圧迫はあまり感じないかもしれません。
しかし、子ども3人がそれぞれ大学生になったときのことを考えると、教育費は入学金を除き1人につき1年間で約108万円(私立)かかり、私立の4年制大学を3人が卒業するまでの8年間では合計1,296万円となるため、家計に重くのしかかってきます。さらに入学する学校によっては、年間の総収入より子どもの教育費が上回ることもあり、どのように教育費を捻出すればいいか頭を悩ませてしまうでしょう。

収入と支出の波を乗り切るためのお金の貯めどきと使いどき

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毎年おおよそ一定の収入であっても、子どもの成長に伴って教育費は変動します。教育費の増減の波があっても、家計の赤字は防ぎたいもの。家計の赤字に頭を悩ませないためには、子どもの進学に合わせた、お金の貯めどきと使いどきを考えておく必要があります。

まず、教育費が比較的かからない時期を“お金の貯めどき”として考えてみましょう。ここでは、教育費だけでなく、老後の資金を貯めることも念頭に置きます。
結婚してから子どもが生まれるまでは教育費はかかりません。同じように子どもが大学などを卒業して就職すると教育費がかからなくなります。教育費はかかるけれど比較的少なくて済むのは子どもが義務教育の期間であり、習い事の支出が少ないと想定される小学校時代でしょう。

次に、貯めどきとは逆の“お金の使いどき”も考えてみましょう。大学などに進学する時期は教育にかかる支出が膨らむので、お金の使いどきです。それ以外にも、家計の収支が赤字になりがちなのが、子どもが生まれて小学校に入るまでです。これは出産や育児で一時的に仕事を休み、収入が減る可能性が高いからです。同じように収入が減るのが老後と言えます。

支出が少ないときは、使いどきに備えて貯めることに専念

このように、子どもの成長にあわせてお金の貯めどきと使いどきを考えて整理すると次のようになります。

1回目の貯めどきは子どもが生まれる前に行なう貯蓄。貯めたお金は子どもが生まれて、子育てのために十分な収入を得られない期間の生活費として使うことになるので、これが1回目の使いどきとなります。

2回目の貯めどきは、比較的少ない教育費で通学させられる子どもが小学生である期間。2回目に貯めたお金は、子どもが大学などに進学するためのお金として貯蓄しておき、教育費の出費が増えるときが2回目の使いどきです。

3回目の貯めどきは、子どもが大学などを卒業して教育費の支出が不要となってから退職するまでの期間。教育費として支出していたお金を貯蓄に回し、退職して収入が減った老後の生活費として備えておきます。つまり、老後が3回目の使いどきとなります。

こどもの成長に合わせた貯めどきと使いどきを知っておき、「貯めるときは貯める」「使うときは使う」とメリハリをつけることで、気持ちに余裕を持ち、より望ましいタイミングでお金を使っていきましょう。

参考:

執筆者プロフィール:

杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)
みはまライフプランニング代表
2005年にCFP資格を取得し、セミナーや相談会等のファイナンシャル・プランニングを開始。2012年に「みはまライフプランニング」設立。「働く人たちの夢をかたちにする」会社員とその家族等へのキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行っている。女性のキャリアと家族や恋愛等コミュニケーションに関する相談、FP等資格取得支援にも力を入れている。保有資格:CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント


サムネイル:Graphs / PIXTA