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自転車事故で高額賠償になる場合も!もしもの自転車事故に備える自転車保険を解説

どの家庭にも1台はあるほど身近な乗り物である自転車。子どもを乗せて自転車に乗ったり、子ども自身が自転車で遊んだりするとき、気になるのは接触や転倒などによる自転車事故。接触や転倒で自分や子どもがケガをすることもあれば、歩行者や自転車同士でぶつかり相手にケガをさせるなどの危険もあります。安全運転が最も大切ですが、万一の事故に備えるため自転車保険への加入は有効です。

交通事故全体のうち約16%は自転車事故

警察庁の「交通事故の発生状況について」によると、平成30年の自転車乗用中の死傷者は84,383人で、うち死亡者数は453人にのぼります。自動車やバイクの事故などを含めた交通事故全体での死傷者数が529,378人であることから、全事故のうち約16%は自転車による事故だということがわかります。

自転車での事故は、自分が被害者になる可能性も、加害者になる可能性もあります。自転車の事故による自分や家族の死傷、事故の相手への補償を目的とした保険が自転車保険なのです。

自転車保険が主に補償してくれることは?

自転車保険はどのような補償内容になっているのでしょうか。自転車事故によって、補償が必要となる代表的なものは2つあります。

1つ目は、自転車事故により自分や家族がケガをしたときの治療費に対する補償。
2つ目は、事故の相手方にケガをさせた場合の治療費に対する人的な補償と自転車で物にぶつかり物を壊した場合の物的な補償。

これら2つは、保険会社により内容は異なりますが、おおむね以下のような補償となっています。

<治療費に対する給付金>

治療費に対する給付金とは、自転車事故で、自転車保険に加入する本人や家族などの被保険者がケガをして、入院や通院、手術をした場合に、入院給付金や通院給付金、手術給付金を受け取れるものです。自転車保険の商品によっては、ケガの治療費に対する給付金の補償がないものや、入院給付金のみの補償のものもありますので、加入前に治療費に関する補償の有無と、これらの補償が必要かどうかの確認をしておきましょう。

<死亡保険金>

自転車事故で、自転車保険に加入する本人や家族など被保険者が死亡した場合に、受け取れるのが死亡保険金です。ただし自転車保険の死亡保険金は、一般の生命保険と比較すると少額になっています。そのため、遺された家族の生活保障とするには、自転車保険に加えて生命保険などの加入を考える必要があります。

<損害賠償責任保険>

自転車事故で自分がケガをしたときは、入院や手術の給付金で補いますが、事故で相手にケガを負わせて相手が入院や手術をしたときは、相手に損害を与えることになるため、損害賠償責任を負うことになります。ちょっとした擦り傷など数日間で治るものはそれほど大きな賠償額にはなりませんが、相手が働けなくなるほどの大事故となった場合は賠償金額が数千万円となることもあります。そのため、ほとんどの自転車保険には、個人賠償責任補償がついており、事故の相手への損害賠償の補償が受けられます。
損害賠償には相手のケガの治療費などの人的な補償と、物を破損したときの物的な補償があります。自転車保険には個人賠償責任補償がないプランや補償額が少ないプランもありますので、補償内容をよく確認してから加入しましょう。

<その他の補償>

自転車保険にはその他に特約が付いていることや、オプションで追加できるものもあります。例えば、事故の際の示談交渉サービスや弁護士費用の補償、事故で自分の自転車を破損し走行できなくなった場合のロードサービス、自転車の盗難補償などです。保険会社により加入できる特約やオプションは異なります。

自転車保険が義務化されている自治体もある!

自転車で大事故を起こし、相手が働けなくなるような大ケガをさせる加害者となった場合、その賠償額は数千万円という高額になることがあります。実際に、小学生が夜間自転車に乗っているときに高齢の女性に衝突し、女性は頭の骨を折り意識が戻らない状態となり、約9,500万円の賠償となった事件があります。

こういったこともあり、貯蓄等では賠償しきれない事態に備え、自転車保険への加入が義務化されている自治体があります。

例えば、京都府の「京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例の改正について~自転車損害保険加入義務化等~」(※1)や、埼玉県の「自転車損害保険等の加入義務化について」(※2)など、その他にもいくつかの自治体では自転車保険加入が義務化されています。
加入が義務化されている地域では、住民であるかないかに関わらずその地域で自転車に乗るには自転車保険への加入が必要となります。

また「義務化されてはいませんが、できるだけ自転車保険に入りましょう」という意味の努力義務となっている自治体もあります。千葉県や福岡県などは「自転車保険(賠償責任保険)に入りましょう」(※3)となっています。また、北海道のように「北海道自転車条例」(※4)により、レンタサイクル業者は自転車保険加入が義務化され、個人は自転車保険加入が努力義務となっている自治体もあります。

自治体によって、ある日条例が変わって努力義務から義務へと引き上げられていくことも。自転車に乗ろうと思ったら、その自治体で自転車保険が義務化されているのか努力義務なのかを知っておくことに加え、自分が自転車保険に加入済みか、また保険期間が満了していないかなど確認しておくことが大切です。

自転車保険以外で備える方法は?

自転車保険以外に自転車事故に備える方法もあります。
自転車保険での最も大きな補償内容となっているのは、相手にケガを負わせたり、物を壊したりしたときの個人賠償責任保険です。個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険、傷害保険などにオプション特約として付けられることも多いので、今、加入している保険に特約として付いているか、その補償額は十分かを確認しておきましょう。

また、自分や家族のケガに対しては、自分や家族が加入している生命保険や傷害保険の入院給付金や手術給付金を受け取ることができますので、これらの保険で補償が十分足りるかも確認しておきます。

なお、自転車保険とそれ以外の保険では補償額や補償内容が異なることもありますので、他の保険の特約で補償が足りるのか、自転車保険に新たに加入したほうが望ましいか、比較検討が必要です。

子どもを乗せたり、子ども自身が遊んだり、趣味として乗ったりする自転車は、安全運転を第一に、自転車保険を第二に考えて親子で楽しく乗りましょう。

参考資料:

執筆者プロフィール:

杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)
みはまライフプランニング代表
2005年にCFP資格を取得し、セミナーや相談会等のファイナンシャル・プランニングを開始。2012年に「みはまライフプランニング」設立。「働く人たちの夢をかたちにする」会社員とその家族等へのキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行っている。女性のキャリアと家族や恋愛等コミュニケーションに関する相談、FP等資格取得支援にも力を入れている。保有資格:CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント