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【3つのタイプ別】夫婦の家計管理の傾向は?

独身時代、働いて得た収入のほとんどは自分で自由に使うことができました。しかし、結婚などで共同生活が始まると、家計という経済の小さな単位ができ、働いて稼いだ収入をどのように使っていくか、どのように貯めていくかを話し合って決めていくことになります。筆者がFPとしておこなってきた家計相談のなかから、夫婦のお金の管理方法にはいくつかの傾向があることが分かってきました。

夫婦のお金の管理方法

夫婦のお金の管理方法はさまざまであり、生活も貯蓄も充実できる最も適切な方法は見つかっていませんが、家計が安定している夫婦のお金の管理方法をみると大きく分けて3つのタイプがあります。

1つ目は夫婦が稼いだお金をすべて家計のお金として管理する夫婦、2つ目は夫婦それぞれが稼いだお金から一定額を家計費として出す夫婦、3つ目は夫婦それぞれが家計のどの項目を支出するか決めている夫婦です。

どのような夫婦がどのようなタイプで家計を管理しているか、詳しく見ていきましょう

タイプ1. 夫婦の収入をすべて家計のお金とする夫婦

tomcat / PIXTA

夫婦2人で1つの家計という考えは、以前からありました。昭和の時代、夫が現金の入った月給袋を毎月給料日に持って帰ってきて、専業主婦の妻が月給袋を預かり、毎月、家計をやりくりしていた形です。

夫婦が稼いだ収入をすべてまとめて1つの財布や1つの口座に入れ、家計を管理するタイプ1の方法は、今でも一般的におこなわれています。夫婦の収入をまとめることで、家計の全体の収支が明確になり、夫婦共同で貯蓄額の目標を立てて計画的に貯蓄ができるので、貯蓄が貯まりやすいことが最も大きなメリットです。

例えば、夫が20万円、妻が15万円の手取りがある夫婦ならば収入は35万円。生活費に20万円かかり、それぞれのお小遣いが3万円とすると、毎月9万円の貯蓄が可能となります。

将来住宅を購入するための頭金を貯めるなどの貯蓄目標がある夫婦や、専業主婦など夫婦のいずれかの収入が少ない夫婦、家計管理を夫婦のいずれかが専門的におこなう夫婦などがタイプ1の傾向が見られます。

家計管理がしやすく貯蓄できる一方で、夫婦の交際費はお互いにお小遣い制です。貯蓄目標がある傾向のタイプ1ではお小遣いの額を抑えている夫婦も多く、それぞれが欲しいものや付き合いがあったときなど単独でお金を使いたいときに、自由に使えるお金が少ないということがデメリットになります。

タイプ2. 夫婦の収入の一定額を家計費とする夫婦

tomwang / PIXTA

夫婦共同の生活を続けると、毎月おおよその支出額が分かってきます。
例えば、住居費が8万円、水道光熱費が2万円、通信費が2万円、食費が5万円、車などその他経費が3万円など。これにより毎月おおよそ20万円支出していると夫婦で把握できます。

このように毎月必要な家計費をおおよそで算出して、夫婦の共通の財布や共通の口座を作り、夫婦それぞれが毎月の収入から共通の財布や口座にお金を出し合い、そこから家計費を支出するのがタイプ2の家計管理の方法です。

夫婦共通の財布や口座に入れる金額は、夫婦であらかじめ決めておきます。その額は夫婦の収入割合によって、決めている夫婦が多いようです。
例えば毎月20万円の家計費が必要である場合、夫も妻もそれぞれ手取り18万円ずつの同額の収入があれば、共通の財布にそれぞれが10万円入れることで必要な家計費の20万円が確保できます。
夫の手取り収入が21万6千円、妻の手取り収入が14.4万円で、おおよそ6対4の収入の場合は、夫が12万円、妻が8万円を毎月共通財布に入れることで家計費の20万円が確保できます。

またタイプ2では、お小遣いの額は定めないため、共通財布に入れた残りの額から夫婦それぞれが交際費の支出をおこなっていきます。

夫婦で家計費分の共通財布を持つメリットは、毎月の家計の支出額が把握できることに加えて、共通財布に入れない個人財布にあるお金をそれぞれが自由に使えることです。

一方でデメリットは、家計費以外は個人財布から自由にお金を使えるので、あらかじめ毎月の貯蓄分も家計費として共通財布に含めるようにしないと、夫婦の貯蓄額が増やしにくいことです。

家計費を共通財布から出す場合は、どこまでを家計費とするかをあらかじめ決めておく必要があります。例えば、スマートフォンやスーツの買い換え、外食費などが、共通財布からの支出か、個人財布からの支出か決めておかないと、必要な家計費が明確にならず共通財布が赤字になってしまったり、夫婦間での家計費使用の不平等感を持ったりすることにつながります。

共通財布を作るタイプは、夫婦とも会社員などで安定した収入があり、お互いの収入差が少ない夫婦が多い傾向です。収入を増やせば自由になるお金も増えるため、夫婦とも仕事で収入を上げたいと思っている夫婦に適しています。

タイプ3. 夫婦それぞれが家計費を分担して支出する夫婦

Rostislav Sedlacek / PIXTA

夫婦がともに収入がある場合に、タイプ1のように夫婦でお金をまとめたり、タイプ2のように夫婦の共通財布も作ったりせず、家計の費目ごとに夫婦のどちらが支払うのか分担して、それぞれが負担している夫婦もいます。タイプ2のような共通の財布がないので、家計費はすべて個人財布からそれぞれが支払います。

分担の一例としては、住居費や光熱費、教育費や保険料など月に1度の支払いがあり、かつ毎月の金額の変動が少ない、いわゆる“固定費”は夫の個人財布から支払い、食品や日用品、衣料費など、日々購入し毎月の支出が変動する、いわゆる“変動費”は妻の個人財布から支払うなど、あらかじめ決めておくのがタイプ3です。

タイプ3のメリットは、夫婦間でも相手に自分の収入を知らせずに済むこと。夫婦間で相手の収入を知らないことがメリットなのかと驚くかもしれませんが、会社員等の給与所得者以外の個人事業主や、ダブルワークなど副業収入がある場合などだと毎月の収入が安定しないこともあります。収入の不安定さを相手に伝えないことで、相手の不安をあおらずに済みます。

さらに、個人財布から夫婦それぞれが費目ごとの家計費の支払いをおこなうため、それぞれの力量で支出を減らすことも可能です。つまり、家計費の節約によって、自分で使えるお金を増やすことが可能となります。

一方で、費目ごとの支出が急に増額になったときの対応が難しいことや、相手が貯蓄をしているのかいないのかわからないというデメリットもあります。

タイプ3は共働きで夫婦ともに平均以上の収入がある夫婦や、夫婦どちらか、または夫婦両方が個人事業主である夫婦などによく見られます。

まとめ

今回は、筆者の家計相談から多かった代表的な3つの家計管理タイプを伝えましたが、家計管理の方法はこの3つのタイプに限りません。他の夫婦と異なる家計管理方法であっても構わないため、夫婦でもっとも管理しやすい方法を見つけておくことが大切と言えます。
家計管理の方法を模索中という夫婦は、これらの代表的なタイプを試したりアレンジしたりしてみるのもいいかもしれません。

執筆者プロフィール:

杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)
みはまライフプランニング代表
2005年にCFP資格を取得し、セミナーや相談会等のファイナンシャル・プランニングを開始。2012年に「みはまライフプランニング」設立。「働く人たちの夢をかたちにする」会社員とその家族等へのキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行っている。女性のキャリアと家族や恋愛等コミュニケーションに関する相談、FP等資格取得支援にも力を入れている。保有資格:CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント

サムネイル:sasaki106 / PIXTA