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【0~6歳の子育て世代必見】未就学児のいる世帯の生命保険の選び方

未就学児がいるパパ・ママは、若く体力があり、重要な仕事もバリバリとこなし始め、いずれ会社や社会の中心になっていく世代というイメージがあるでしょう。他方で、教育や住宅、老後の資金については、これから徐々に準備していていかなければならず、また万一のリスクに備えておく必要もあります。今回は、未就学児のいる世帯の保険選びのポイントに触れながら考えていきます。

未就学児を持つ親の基本的な保険の考え方

shimi / PIXTA

未就学児のいる世帯が加入する生命保険については、以下のポイントを押さえることが大切です。

・親に万一のことがあったときの家族の生活保障をどうするか?
・子どもの教育費は保険で準備するのが良いのか?

まず、一家の大黒柱に万一のことが起こった場合、家計収支に大きな影響が生じます。特に、小さな子どもがいる家庭では、子どもが高等教育を終え独り立ちするまでにはまだまだ長い年数がかかります。その間家族が安心して生活できるための保障が重要になります。また親が何かの事情で働けなくなった時も、同じように生活保障が必要です。

このように生活保障の視点から生命保険を考えることになります。

また、子どもの生命保険の必要性は、医療費の負担の有無により検討します。子どもの医療費については、多くの自治体が医療費助成制度により無償化を実施しています。助成制度がある自治体では、子どもが病気になったり、けがをしたりしても助成範囲の治療については医療費の負担がないため、子どもの医療保険はほとんど必要ないでしょう。ただし自治体により内容は異なるため、住んでいる自治体の医療費助成制度について事前に必ず確認してください。

一方、子どもの教育費については、大学院や海外留学、ダブルスクールなど教育の多様化や教育期間の長期化により費用も増加します。そのために教育資金の準備をしていくことが必要です。

生命保険選びのポイントは必要保障額

polkadot / PIXTA

夫が万一の場合、子どもが社会へ巣立つまでの生活費・教育費とその後の妻の生活費などを確保するためには、どのような生命保険に加入すれば良いのでしょうか。

まず、会社員の夫に万一のことがあった場合、遺族の保障額がどのくらい必要かを次の計算式で算出します。

遺族の必要保障額の目安=(1)万一の時にかかるお金-(2)手当可能な資金

(1)の内訳
・子ども(複数いる場合は末子)が独立するまでの生活費と子どもの教育費
・子どもが独立した後の妻の生活費(末子が独立時の妻の平均余命まで)
・葬式費用
・予備資金(生活費の6カ月~1年分が目安)

(2)の内訳
・公的遺族年金
・妻の公的年金
・妻の収入(65歳までが目安)
・死亡退職金、弔慰金(会社員の場合)
・貯蓄(預貯金、株式、投資信託等)

(1)から(2)を差し引いた必要保障額が分かれば、その金額が生命保険の死亡保険金の目安になります。

必要保障額をまかなうための代表的な保険は、定期保険です。定期保険とは死亡保険の一種で、一定の期間内に被保険者が死亡した場合に保険金が支払われます。満期金がなく掛け捨てのため、保険料は低く抑えられています。

また、保険料払込み期間中の解約返戻金が低い分、保険料が割安な低解約返戻金型終身保険は未就学児のいる世帯には適しています(この保険に関しては、のちほど詳しく説明します)。

その他には収入保障保険があります。収入保障保険は、例えば60歳や65歳まで、というように保険期間を決めて、夫に万一のことがあった場合に必要な保障額を毎月受け取るタイプの保険です。やはり通常の定期保険よりも保険料が割安です。

ただし、未就学児のパパ・ママは、まだ若くて元気です。亡くなることよりも、万一の病気やけがで働けなくなったときのために、所得補償保険に加入するという選択肢もあります。長期保証タイプの所得補償保険は、例えば60歳や65歳まで決められた所得を補償してくれます。保険金は一時金としてではなく、毎月支払われます。

共働き世帯の場合、いずれの保険を選択しても、残された妻の収入の分は必要保障額が減らせます。さらに、妻に十分に生活できる収入がある場合は、その間の生活保障は不要になります。

一方、専業主婦世帯の場合、妻に収入がないため、夫に万一のことがあると一気に生活費の不足額が膨らんでしまいます。不足額を埋めるために死亡保険金の額が増える分、保険料の負担も大きくなります。そのために専業主婦世帯の場合でも万一の際は妻が働き始めて収入を増やすことも検討しておきましょう。

なお、住宅ローンを借りて持ち家に住んでいる場合には、住宅ローンに団体生命保険が付いているので、夫が死亡したり高度障害になったりしたあとの住宅ローンの返済はなくなります。生活費のうち住宅ローン返済額分の支出は不要になるため、必要保障額も減らせます。

生命保険を選ぶときには必要保障額をカバーでき、現在の家計から無理なく契約できる保険料を前提に比較・検討してみてください。

子どもの教育費の確保はどのようにする?

Fast&Slow / PIXTA

子どもの教育費については、高校授業料無償化や、今後予定されている保育料の無償化などにより親の負担が減る一方、私立の小中学校への進学や学習塾の費用が増えるなど、教育費の負担も二極化しています。

また、高等教育も2020年度より無償化が実施されますが、これには年収の制限もあり、全ての家庭が恩恵を受けるわけではありません。

そのため、教育費についても状況に応じて準備が必要になります。

教育費を準備するための一般的な保険が学資保険(子ども保険)です。子どもの誕生のころから保険料を積み立て、高校や大学の入学時に合わせて満期保険金を受け取ります。払込期間中に親に万一のことがあった場合には、以降の保険料の払い込みが免除されるのもメリットです。
しかし、昨今の低金利による運用利回りの低下により、満期金が払込額を割ってしまうケースもあり、たとえ増えたとしても、満期保険金がインフレにより目減りする恐れもあります。

最近は、学資保険の代わりに低解約返戻金型終身保険に加入するケースも増えています。払込期間中は払戻率が低く払込保険料を下回りますが、払込終了後は払戻率がアップし、払込保険料を上回ります。払戻金を受け取りたい時期(=大学入学など教育資金がかかる時期)を決めて保険料払込期間を決めます。この保険は、保険料払込期間中は払戻率が低い分、保険料も割安に設定されています。

一方、生命保険で教育資金の積立をせずに、生命保険以外の方法で教育費を準備するという考え方もあります。

生命保険以外で子どもの教育費を確保する方法

まずジュニアNISAを利用する方法です。19歳までが対象で、毎年80万円、最長5年間までは運用益や売却益に税金がかからず、効率的な運用が期待できます。ただし18歳までは払い出しができず、元本割れのリスクもあります。

ジュニアNISAよりも長期間にわたり非課税運用できるのがつみたてNISAです。毎年40万円まで、最長20年間、非課税投資ができるため、長期で運用した場合に運用の効果が高くなります。
また、いつでも引き出せるため、子どもの高校や大学の学費が必要になったときに引き出して使うことができます。ただし、つみたてNISAも元本割れのリスクがあるため銘柄選択を慎重に行なう必要があります。

その他には、児童手当を積立貯蓄していくという方法です。子どもが生まれると、翌月から中学校卒業時までの間、子ども1人につき、月額10,000円から15,000円の児童手当が支給されます。この児童手当を使わずに貯蓄をすると、合計で約200万円に達します。これを高校や大学の教育費の一部に充てるという方法です。ただし児童手当には所得制限があり、所得が多い人には支給額が減額されますので積み立て可能額が少なくなります。

まとめ

ライフステージによって必要な資金やリスクの内容は変わるため、ステージごとに保険を見直すようにしましょう。また教育費など必要資金の準備には、生命保険はもちろんですが、生命保険以外の方法もあわせて検討しましょう。一般的に子どもが就学するまでの間はお金をためやすい時期とされており、この時期を利用して必要な資金を準備することが大切です。

執筆者プロフィール:

橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。

サムネイル:Ushico / PIXTA