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【老後資金に不安なママへ】老後に向けた資産形成の強い味方・iDeCoについて知ろう!

「人生100年時代」「老後資金2,000万円問題」など、このところ老後資金の問題がクローズアップされ、将来に不安に抱えているママも少なくないでしょう。確かに年金だけで老後の生活費を賄うことは難しい時代になり、老後に備えて資産形成をする必要性は高まっています。そこで今回は、老後資金を確保する手段として注目されているiDeCo(個人型確定拠出年金)について分かりやすくお伝えます。

最近よく耳にするiDeCoとは? 設立された目的は?

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iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、「イデコ」と読みます。
もともと確定拠出年金のことをDC(ディーシー・Defend Contribution Plan)と言いますが、新しく“個人型”を指す言葉として「私」と言う意味の「i」を付け、iDeCoと呼ばれるようになりました。それでは、はじめにiDeCoが創設された背景について解説します。

日本人の寿命が伸び、年金を受給する高齢者が増える一方で、年金保険料を負担する若い世代の数が減少してきました。その中で年金制度を維持するためには、年金の受給額を減らしたり、支給開始の年齢を遅らせたりする必要が生じています。
また、老後が長くなった分、必要な老後の生活資金も増加し、年金だけでは老後の家計は不足する状況になっています。
そのため、これからの時代、長い老後をお金の心配をしなくて過ごすためには、年金だけに頼らずに、ひとりひとりの自助努力で資産形成する必要になりました。
そこで国も、個人の資産形成を応援するために、税金の優遇のメリットが大きいNISAやiDeCoの制度を創設したのです。

特にiDeCoは長期投資に向いており、老後資金形成の一助となることが期待されています。
2017年1月に始まったiDeCoの加入者は、2019年7月時点ですでに130万人を超えており、特に会社員では1ヵ月で3万人以上増加し111万人に達しています。(※1)

iDeCoで優遇される3つの税金メリット

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iDeCoの最大のメリットは税金の優遇です。iDeCoには、大きく分けて3つの税金のメリットがあります。

1. 掛金が全額所得控除になる

iDeCoの掛金は全て所得控除の対象になります。会社員や個人事業主にとっては、これが最も大きなメリットと言えるでしょう。

例えば、所得税率が10.21%(復興特別所得税含む)の会社員が、毎月1.2万円1年間で14.4万円の掛金を払った場合、所得から掛金全額分の14.4万円を控除することができます。
所得が14.4万円少なくなるということになるので、その金額に対する10.21%の税金、約14,700円が還付されます。さらに翌年の住民税も10%(住民税の所得割額は一律10%です)の14,400円少なくなるので、合わせて20.21%、約29,100円も税金が軽減されるのです。

同じ14.4万円を他の金融商品で運用しても、なかなかこれだけのリターンがあるものはないですね。

2. 運用益が非課税になる

iDeCoの掛金は、投資信託や定期預金、保険などの金融商品で運用されます。金融商品の売却益や配当、利息などの運用益に対しては、20.315%(所得税、復興特別所得税、住民税の合計)がかかりますが、iDeCoについては非課税なのです。
非課税により税金を納めなくてよくなった分も再投資に充てることができるので、長期の運用をする場合、さらに有利になります。

3. 受取時も所得控除がある

iDeCoで運用した資産は、60歳以降に受け取ることができますが、受け取り方には3通りの方法があります。
・一時金で受け取る
・年金で受け取る
・一時金と年金を組み合わせる

一時金で受け取る場合は、退職所得となり退職所得控除が受けられます。掛金の支払い期間が20年までは1年につき40万円、20年を超える分は1年につき70万円を所得額から控除することができます。

年金で受け取る場合は、公的年金控除として65歳未満の人は70万円、65歳以上の場合は120万円を年金額から控除できます(控除額は年金額が限度)。

ただし、iDeCoの資産を一時金で受け取り、かつ会社から退職金を受け取る場合は、iDeCoと退職金を合算するため、合計額が控除額を超えてしまうと税金が増えることになります。
また年金で受け取る場合も、他の公的年金と合算した額が控除額を超えてしまうと、税金や社会保険料が予想外に増えてしまうこともあります。

そのため、受け取り方についても、他の所得との兼ね合いを計算して、選択するようにすることが大切です。

一時金で受け取る場合、あるいは年金で受け取る場合にほかの所得との兼ね合いで控除額を超えてしまいそうな場合は、一時金と年金を組み合わせることで少しでも手取り額を多くする方法を確認してみてもいいでしょう。
その際の順番としては、まず退職所得控除に収まる金額を一時金で受け取り、残りの金額を年金で受け取るという方法が考えられます。
ただし、受取時の税制が変わっている可能性もあり、また「税金が少し高くても年金で受け取りたい」「一時金の方が安心」など考え方もそれぞれなので、受け取る際には事前にiDeCoの講座がある金融機関や税理士などの専門家に相談しましょう。

他にもあるiDeCoのメリット~運用面~

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iDeCoで運用する投資信託は、信託報酬(投資信託を保有し続けている間かかる運営管理料のこと)が低く設定されています。長期の運用では、信託報酬の差が手取り額の差に大きく影響します。
また一般の投資信託では、購入時に購入手数料がかかることがありますが、iDeCoの投資信託の多くは購入手数料がかかりません。

このように、運用商品のコスト面でもiDeCoは有利な資産運用と言えます。

iDeCoのデメリットやリスクは?

iDeCoには多くのメリットがある一方、次のようなデメリットやリスクがあります。

まず、iDeCoで積み立てている資産は60歳までは引き出すことができません。そのため、60歳に到達しない時期に使う予定がある資金については、iDeCoではなく預貯金や他の金融商品で確保しておく必要があります。
反面、60歳まで引き出せないということは、着実に老後資金を作りやすいということでもあります。デメリットを逆手にとってメリットと考えることもできます。

また、選択する運用商品によっては元本割れのリスクもあります。そのため、商品の選び方にも注意し、自身のリスク許容度(全資産のうち、どのくらいの割合をリスク商品とするか)と、リスク耐性(資産がどのくらい目減りしても許せるかの度合い)に合わせて、ローリスクローリターンの商品か、ハイリスクハイリターンの商品かを選択することが大切です。

一般的に運用成績は、運用期間が長いほど高くなります。一時的に資産が元本を下回ったとしても、長期で積み立てを続けることにより、より運用の効果が上がる可能性が高まるので、焦らず長くコツコツと積み立てるように心がけましょう。

iDeCoの掛金はいくらまで?

毎月のiDeCoの掛金は、職業や勤務先により限度額が決まっています。
毎月の掛金の限度額は以下の通りです。

・第1号被保険者(自営業、学生など) 6.8万円 
・第2号被保険者(会社員、公務員)
・勤務先の企業型DCに加入している人 2.0万円
・勤務先の企業型DCと確定給付型年金に加入している人 1.2万円
・勤務先の確定給付型年金に加入している人 1.2万円
・勤務先に企業年金がない人 2.3万円
・公務員など 1.2万円 
・第3号被保険者(専業主婦・主夫)
2.3万円

毎月の掛金は5,000円からで1,000円単位で自由に決められます。また掛金は1年に1回変更することができます。生活資金に余裕がある時期には掛金を増やし、出費が多く余裕のない時期には減額して家計を調整することも可能です。

iDeCoを始めるときの金融機関選びの注目ポイント

iDeCoを始めるには、証券会社や銀行などの金融機関でiDeCoの専用口座を作らなければなりません。そのときに、どの金融機関を選べば良いか悩んでしまいますね。金融機関選びのポイントとして、以下の点を比較してみると良いでしょう。

1. 口座管理手数料
iDeCoの専用口座を開設すると「加入時手数料」と「口座管理手数料」がかかります。そのうち口座管理手数料は毎月かかるため、少しでも安い金融機関を選ぶことがコストの削減につながります。

2. 商品のラインアップ
iDeCoの運用商品は、金融機関ごとに異なります。品揃えがたくさんあるか、自分に向いている商品があるかなどをチェックしてから選びましょう。商品の内容が分からない場合は、金融機関の窓口で相談したり、金融機関のiDeCoセミナーに参加してみたりすると良いでしょう。
金融機関に相談するとそのまま口座を開設させられそうでイヤという人は、専門家などが行っている有料のiDeCoセミナーに参加してみる方法もあります。

3. その他
窓口で個別相談に対応している、ホームページが充実している、ポイントが付与されるなど金融機関によりさまざまな特徴があります。この点でも自分に合うものがあれば選択のポイントになります。

ひとつのポイントだけで選択するよりも、これらを総合的に判断するのが大切です。

まとめ

老後の資産形成のために設けられたiDeCo制度。安心できる老後のために、早い時期から始めることも大切です。老後のお金に不安があれば、対策のひとつとしてiDeCoを検討してみてはどうでしょうか。iDeCo詳細については、金融機関の窓口やホームページで確認してください。

執筆者プロフィール:

橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。

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