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子どもの医療保険は必要か、3つのケースで考察!

子どもが病気やケガをしたとき、入院や通院などの支出で家計を圧迫する可能性があります。そのような場合を対象として子どもの医療保険がありますが。しかし、医療費を助成してくれる自治体も多くあることから、子どもの医療保険は必要ないという人もいます。では本当に、万一に備えるための子どもの医療保険には加入しなくてもいいのでしょうか。

そもそも、子どもの医療保険とは?

子どもの医療保険は、大人の医療保険と同様、子どもが病気やケガで入通院したときに保険金を受け取れる保険のことです。生まれたばかりの子どもは小さく、ちょっとした病気で入院になることもあり、少し大きくなって外を走り回るようになると、転倒などでケガをして通院することもあります。

例えば、入院1日5,000円、通院1日3,000円で1日目から保険金を受け取れる子どもの医療保険に加入していると、病気やケガで3日入院すると15,000円、3日通院すると9,000円の保険金を受け取れるので、家計を圧迫する突発的な治療費の負担を軽くすることができます。

子どもの年齢や保険会社にもよりますが、こどもの医療保険は、大人より安い保険料で加入でき、入通院の際には大人と大差ない保険金を受け取れることが魅力です。
また、保険の契約者が親の場合、子ども本人の死亡時以外に、契約者(親)の死亡時にも保険金を受け取れるものもあります。

各自治体の医療費の助成制度を把握する

子どもの医療保険が必要かどうかの前に知っておくべきことがあります。
まずは、皆が健康保険に加入しているということ。健康保険は病気やけがで入通院したときに、健康保険証を提示することで、医療機関の窓口での支払いは治療費の3割に軽減されます。

次に、子育て支援のひとつの施策として、子どもの医療費助成制度を導入している自治体が多くあるということ。医療費助成制度は、助成を受けられる子どもの年齢や、助成を受けられる金額、保護者の収入制限で助成を受けられないこともあるなど、自治体によって内容が異なります。

例えば東京都江戸川区の場合、中学3年生までの子どもが病院等の医療機関で健康保険証を使用して診療を受けたとき、医療費の自己負担分を区が助成してくれます。
助成を受けるためには子どもが生まれたときや転居したときに申請が必要ですが、申請することで江戸川区では所得制限なく医療費助成の対象となるのです。

子どもの医療保険が必要かどうか判断する前に、お住まいがある自治体の医療費助成制度の内容をよく確認しておきましょう。

子どもの医療保険に加入したほうが望ましいか

子どもの医療保険と自治体の医療費助成制度を理解したうえで、子どもの医療保険に加入したほうがいいケースと、しなくてもいいケースをそれぞれ考えてみましょう。

医療費助成で充足できる場合は、子どもの医療保険は不要

自治体の医療費助成制度が充実していて、子どもが入通院しても支出が増えず、さらに収入も減らないケースは、子どもの入通院に関して家計負担がないので子どもの医療保険の加入は不要と考えられます。

例えば、収入に関わらず治療費の全額が助成される自治体に住んでいて、助成される範囲に限る治療の場合、支出は増えません。さらに、小さな子どもはひとりで入通院ができないので大人の付き添いが必要です。ただし、付き添う人が専業主婦などで収入がない場合、または有給休暇が利用できる場合は、毎月の収入に影響がありませんので、自治体の医療費助成制度で事足ります。

医療費助成で不足する場合は、子どもの医療保険は必要

自治体の医療費助成制度が充実していたとしても、入通院に治療費以外の支出がある場合と、付き添い者の収入が減る場合には、子どもの医療保険が必要と考えられます。

子どもの入院時に個室などを利用すると、治療費以外に差額ベッド代がかかります。差額ベッド代は、病室のベッド数によって異なりますが、おおよそ1日5,000円~10,000円です。5人以上の病室には差額ベッドはかかりませんが、周りに迷惑をかけたくない、プライバシーを守りたいと考えたとき、人数の少ない部屋か個室を選択することがあるでしょう。
また、大人が付き添って病院に宿泊する場合には、付き添い用ベッド代や食事代などもかかります。

つまり、さまざまな事情で治療費以外に入通院の費用が想定されるときは子どもの医療保険がその負担を軽減してくれますので、子どもの医療保険への加入が必要と言えます。

また、子どもの入通院の付き添いによって、付き添い者が働けず、収入が減る場合にも、収入を補填するという意味で子どもの医療保険の必要性が増します。
子どもの医療保険の保険金額は、付き添う者の収入を目安に考えます。付き添い者が時給1,000円で1日5時間働いている場合は1日につき5,000円、時給1,250円で1日8時間働いている場合は1日につき10,000円の保障があると、収入減による家計の負担がなくなります。

さらに、入通院する子どもに兄弟がいたり、世話をする人(子どもの親など)の親などの介護をしていたりする人で、子どもの入通院期間は子どもの兄弟や親の世話をベビーシッターやヘルパーにお願いしなければならない場合は、その費用が必要です。
さらに見落としがちなのが、ペットを飼っている場合です。ペットを預けるには、ペットホテル代やペットシッター代がかかります。

このように、子どもの入通院の際にこれらの支出増が考えられる場合には、子どもの医療保険は頼りになる存在です。

医療費助成で不足しても蓄えがあれば、子どもの医療保険は不要

子どもの入通院時に治療費以外の支出がある場合と、付き添い者の収入が減る場合には子どもの医療保険が必要とお伝えしてきましたが、これらの場合でも子どもの医療保険を必要としないケースが2つあります。

1つ目は、貯蓄が十分にあり、子どもが入通院して支出が発生ししても大きな負担にならないケースです。

2つ目は、加入済みの保険に子どもの医療保障が付いているケースです。学資保険に加入した際に医療保障の特約を付けていたり、家族でまとめて1つの家族型医療保険に加入していたりすることもあります。

これらのケースは、新たに子どもの医療保険に入る必要はないと言えます。子どもの医療保険を検討する前に、現在加入済みの保険をチェックしておきましょう。

子どもの医療保険に加入せず、貯蓄や投資などで蓄える方法も

子どもの医療保険には加入しないで、保険料相当の金額を、毎月貯蓄や投資で積み立てておく方法もあります。積み立て始めたころに子どもの入通院が発生すると、積み立てた額では治療費の支払いが不足することもありますが、入通院せず過ごした場合には貯蓄として残るようになります。

まとめ

ケースごとに子どもの医療保障へ加入が必要か不要かを考えてきましたが、自治体の医療費助成制度や家庭事情、子どもの状態(病気やケガになりやすいか)、家計状況などによって判断するポイントが異なります。子どもの医療保険を検討する際には、これらを整理してから考えるようにしましょう。


執筆者プロフィール: 杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー) みはまライフプランニング代表 2005年にCFP資格を取得し、セミナーや相談会等のファイナンシャル・プランニングを開始。2012年に「みはまライフプランニング」設立。「働く人たちの夢をかたちにする」会社員とその家族等へのキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行っている。女性のキャリアと家族や恋愛等コミュニケーションに関する相談、FP等資格取得支援にも力を入れている。保有資格:CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント