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住宅ローンは返し方が大事! あとで役立つ賢い返済の知識

住宅ローンの金利は史上最低の水準が続いています。「金利が低い今のうちにマイホームを」と考えている人もいることでしょう。とは言え、住宅ローンをむやみに借りたり、返し方をしっかりと考えずに老後まで残してしまうと、大きな負担になってしまいます! 夢のマイホームでゆとりあるライフステージのために、今から知っておいたほうが良い返済のヒントをお伝えします。

65歳以降に住宅ローンは残さない? 長生き時代の考え方

世界有数の長寿国である日本では、いまや「人生100年時代」がふつうに語られるように、多くの人が長い老後を過ごします。年金だけでは足りない老後の生活費は、預貯金などを取り崩しながら補っていくので、若いときからの資産形成は重要なのですが、老後の生活コストを抑えることも大切です。

そのために大事なポイントは、老後に住宅ローンを残さないこと!

ここでの老後とは「仕事を引退して、主に年金収入で生活を始めるときから」を言います。サラリーマンや公務員では65歳以降がひとつの目安でしょう。65歳まで住宅ローンを残さないためには、借り方も大切ですが、返し方も同じくらい大切です。なぜなら、返し方の違いで老後の生活も大きく変わるかも知れないからです。

1年でも早く完済を! 住宅ローンの返済期間の決め方

多くの住宅ローンは、完済年齢(返済が終わる年齢)の上限が80歳未満なので、45歳未満の人であれば最長35年の住宅ローンを借りることができます。

返済期間が長いほど毎月の返済額を抑えることができるので、不動産会社などの営業もできるだけ長い返済期間を勧めて、借りる側もあまり深く考えずに期間を選んでいるケースをよく見ます。しかし返済期間が長ければ完済年齢も遅くなり、老後の負担になってしまいます。

返済期間を決めるときには、2つのポイントがあります。

1. 住宅ローンは65歳までに返し終える計画を立てること

しかし65歳までに完済しようとして初めから無理に返済期間を短くすると、毎月の返済額が増えすぎて、生活を圧迫してしまう心配があります。その場合は65歳から1年ずつ完済年齢を延ばして返済額を計算してみます。 住宅ローンのパンフレットには、よく返済期間が5年刻みで書いてありますが、実際には1年単位で選べます。そして、無理のない返済ができる最も短い年数で返済期間を決めると良いでしょう。1年でも返済期間が短い方が、返済も早く終わり、支払う金利も少なくなります。ただし、目標はあくまで65歳以内での完済です! あわせて65歳までに返済が終わるよう繰上げ返済が可能かも検討しましょう。

2. 退職金で返済しない計画を立てること

退職金は大切な老後資金になります。住宅ローンの返済に退職金を使ってしまうと、その後の生活が苦しくなりかねませんので大切にとっておきましょう。

利息を軽減するための繰り上げ返済の考え方

早くローンを完済するためには、繰り上げ返済は有効な手段と言えます。繰り上げ返済にはどのような方法があり、効果的な時期はいつなのかを順に見ていきましょう。

繰り上げ返済をするときは期間短縮型? 返済額軽減型?

繰り上げ返済をする場合、繰り上げ後の返済方法を「期間短縮型」か「支払額軽減型」のどれにするかを選択します。
期間短縮型とは、毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方法です。一方の返済額軽減型は、返済年数は変えずに毎月の返済額を減らす方法です。この場合、どちらを選択すれば良いのでしょうか。

ここで、住宅ローンを3,000万円、金利1.3%、返済年数30年(360回)で借入し、10年後に300万円を繰り上げ返済した場合で比べてみましょう。

【ケースA】期間短縮型
繰り上げ前:毎月返済額 10万681円
繰り上げ後:毎月返済額 10万681円(変わらず)
返済回数  323回(37回分短縮)
軽減される利息 81万3,055円

【ケースB】返済額軽減型
繰り上げ前:毎月返済額 10万681円
繰り上げ後:毎月返済額 8万6,479円(1万4,202円減額)
      返済回数  360回(変わらず)
      軽減される利息 40万8,490円

このように期間短縮型のほうが、利息の支払い額が40万円以上少なくなり、返済年数も3年以上短縮できることが分かります。毎月の返済額を負担に感じなければ期間短縮型のほうが、メリットが大きいと言えます。

ただし、必ずしも期間短縮型を選ばなければいけないとは限りません。
長い返済期間には、家計が厳しい時期もあることでしょう。たとえば、子どもの教育費がかかる時期には返済額軽減型を選択すると毎月の返済額を減らすことができ、生活に余裕ができるというメリットもあります。家計の状況によって、2つのタイプを上手に使い分けることが望ましいです。

余裕があれば、繰り上げ返済の時期はできるだけ早く!

繰上げ返済を行う時期が早ければ早いほど、利息を減らす効果が高くなります。

住宅ローンを3,000万円、金利1.3%、返済年数30年で借り入れし、300万円を繰上げ返済するケースで比べてみましょう。(※期間短縮型を選択)

【ケースa】5年後に繰上げ
繰り上げ前:毎月返済額 10万681円(繰り上げ後も変わらず)
繰り上げ後:返済回数  320回(40回短縮)
軽減される利息 106万3,467円

【ケースb】15年後に繰上げ
繰り上げ前:毎月返済額 10万681円(繰り上げ後も変わらず)
繰り上げ後:返済回数  325回(35回短縮)
      軽減される利息 57万7,763円
 
このように同じ300万円の繰り上げ返済でも、5年後に繰り上げたほうが15年後よりも、返済回数も5回分多く短縮でき、利息も48万円以上少なくなります。余裕資金がある場合は、できるだけ早くに繰り上げ返済をすることが効果的です。
5年で300万円の繰り上げ返済は無理という人も、少額でも早めに、こまめに繰り上げ返済をすることで負担軽減の効果を大きくすることができます。

繰り上げ返済の注意点

メリットの大きい繰り上げ返済ですが、注意が必要な点がいくつかあります。

1%未満の金利で住宅ローンを借りている場合は得する金額が減る?

住宅ローン控除の控除期間中の繰り上げ返済についてです。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合に、年末借入残高の1%を所得税(引ききれない場合は上限136,500円までの住民税)から控除することができる制度です。
例えば年末に住宅ローンの残高が3,000万円ある場合、その1%の30万円の税金が戻ってきます(ただし所得税、対象の住民税を30万円以上納めている場合)。
控除期間は現行では10年ですが、消費税率の引き上げが実施され建物に10%の消費税率が適用された場合、13年に延長される予定です。なお、延長が実施された場合、2020年12月31日までの入居が条件なので時期についても間に合うように注意してください。

ここで、金利1%未満の住宅ローンを借りている場合、控除期間中に繰り上げ返済をすると、1年間に支払う利息の金額が、住宅ローン控除により戻ってくる税額より少なくなってしまいます。
つまり、その差額分だけ得をする金額が減ってしまうことになります。

このような場合、控除期間中は繰り上げ返済をせずに、毎年軽減される住宅ローンの控除額を積み立てておき、控除期間終了後にまとめて繰り上げ返済をするという方法もあります。税制と低金利を上手に組み合わせて有利な計画を立てましょう。

繰り上げ返済手数料に注意

繰り上げ返済時に繰り上げ返済手数料を設けている金融機関もあります。特に固定金利型や期間固定特約型の住宅ローンには高額の手数料がかかることも少なくありません。

また金融機関によっては、窓口での繰り上げ返済には手数料がかかり、インターネットバンキングの場合にはかからないところもあります。返済手数料が思わぬ出費とならないように、事前によく確認しておくことが大切です。

手元資金が足りなくなる!

繰り上げ返済にこだわりすぎて手元資金が底をついてしまうと、緊急時に困ることもあります。手元資金は、収入がなくても1年程度は生活できる金額が目安です。たとえば1ヵ月の支出が30万円の家庭の場合、30万円×12カ月=360万円程度が手元資金になります。最低限の手元資金は確保して、余剰資金を繰り上げるようにしましょう。

まとめ

人生の3大資金は「教育」「住宅」「老後」と言われています。それぞれの夢や目標を実現するためには、それぞれの資金についても知恵を使うことが大切です。正しい情報や知識を手に入れ、生活に、人生に上手に活かしましょう。

執筆者プロフィール:
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。